常勝の強さを産みだす力

広岡達郎の弟子で最近まで福岡ソフトバンクホークスの監督をしていた工藤公泰が、心臓外科医の高橋医師の本を読んで感化され、ソフトバンクを日本一に5回達成したという話を聞いて高橋医師がどのような話を書いていたのか気になっていた訳であるが、たまたま工藤と高橋医師の対談を読む機会があったので気づいたことを書こうと思う。

昔、広岡達郎が「私はV9を達成した頃のジャイアンツのようなチームを作るのが目標である。」と著書に書いていたのを私も知っている。V9を達成した時のジャイアンツというのはどのようなチームであったかというと、器用な猿がチームワークを重要視して集団で上手に勝つようなチームでは無く、ライオンがお互いの実力を発揮しながら勝利に協力し合うチームである。
広岡は個々がライオンで勝利に向かってチームワークを発揮するチームが本当に強い常勝のチームであると考えていた訳で、V9時代のジャイアンツを模範として具体化したチームが広岡監督時代の強い時の西武ライオンズである。その強い西部時代にピッチャーで活躍したのが工藤である。

私はそのことは頭に残っていたが、具体的にどのような状態でそんなチームが出来るのかわからなかった。強い選手を集めても実際には勝てない。チームワークを重視しているだけでも優勝までは出来ない。

しかしながら神の手と言われ7000人の子供の心臓を手術した心臓外科医の高橋幸弘医師と工藤公泰の対談を読んで「強いチームとは何か」が判った。

手術というのは野球のようにチームプレーが重要な「試合」のようなものであり、特に心臓外科手術というのはもっともチームプレーが最重要で一人ひとりが高い技術力を持っていないといけないそうである。一人位実力が低くても、他に実力がある者が居れば良いようにも思えるが、手術は最低人数で実施する故に個人のパフォーマンスが重要で一人でもスキルが未熟な者がいると高い者のスキルを低めるそうである。

そのような高いスキルを持った者が集まっても必ずしも高いパフォーマンスを発揮できる訳では無い。
高橋医師によると、最高のメンバーが最高のチームワークとパフォーマンスを発揮するには、「手術というのは高いスキルを持つ者達が己の技を披露しあう舞台であると個々が考え実践すること」らしい。
そして、「そのような舞台のような手術は、不謹慎のように聞こえるかもしれないが、全員が楽しく手術を楽しんでいるように見える」そうである。

なるほど。「チームワークが大事だから!」とか「失敗したらどうしよう!」では無くて、まして「絶対成功するぞ!ポジティブポジティブ!」では無い。「明日の手術で俺の神業を仲間に披露してやろう」という「劇場の名優達の集合体」が常勝を産みだすということだ。
そして確かに強者たちは困難を楽しんでいるように見える。芭蕉の言葉にもあるが、名人は危うき所でも遊ぶように見える。

半沢直樹が面白かったのは、脇役達を主役のよりも存在感の強い名優で揃えたからと私は考察したが、その具体的な理由は判らなかった。
今判った事は、半沢直樹は「名優が芸を見せ合う番組」だったからV9時代のジャイアンツと同じだったという事だ。

私が以前に考察した「本番に強い人の共通点」は、試合に勝つ負けるとか失敗するしないとかの「結果の価値観」に左右されず、結果よりも「自分の美しい姿を披露したい」という「誰かを魅力したい価値観」で試合に臨むところである。

勝利の女神だけでなく幸運の女神たちは、美しい姿を披露する劇場型アスリートがタイプのようだ。

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