勝ち組負け組の差は何によって生じるか?

某大学の教授が、
「最近の大学生は就職ができないので可哀想である。」
と言っていた。

これは、至極当然の話のように思えるけれども、
教育者としては、不適切な発言であります。

なぜなら、
人生の大きな価値が、
就職とか学歴にあると言ってるのと同じであるからだ。
就職できた者が勝ち組で、できない者が負け組みたいなね。

もちろん私は、勝ち組、負け組にこだわるべきでない。などと、
言うつもりはまったくない。

私が言いたいのは、
本当に勝ち組になるには、
就職とか学歴があれば勝ち組になれるという思想こそ負け組の発想であり、
そのような価値観を持っていると、
必ずいつか負け組になるということが言いたいのである。


「人生で果たすべき目的とは何か?」
「どう生きれば充実した人生が送れるのか?」

とは、誰もが一度は考える問題だと思う。

「俺のなすべき仕事はこれなのか!」
とか、
「世の為人の為の仕事をしたい!」
とか
あるいは、
「仕事がないので、俺は価値がない」
とか
「病気になったからもう駄目だ。人生失敗した。」
とか悩む。

ところが、
「価値のある仕事ってなんだろう?」
「自分しか出来ない仕事って何?」
と考えれば、考えるほど判らなくなる。

世の為人の為の仕事に価値があるのならば、
働けない人間は価値がないのでしょうか?

じつはこのような実利的な考え方をすること自体が、誤りであり、
いつか負け組になる価値観なのです。

この問題については、
古くから西洋でも東洋でも色んな哲学者が考えていて、
ひとつの結論に到達していると思われるのでそれを紹介しましょう。


その結論とは、

人間にとって根本なことは、
実のところ、
「何を為すか?」ではなく、
「何であるか?」ということを発見することである。


つまり、
「いかに善を為すか?」ということよりも
「いかに善であるか?」ということのほうが重要である。
ということであります。

人は社会的に何かを為すのが善ではなく、
その人が人間的に成長することが善である。

ということであります。

たとえば、
職業は豆腐屋であるかも知れないし、
タクシーの運転手かも知れない。
しかし、天を知り、命に目覚めた人のやる仕事は「引力」を持つ。
そして、そんな「命に目覚めた」「祈りを込めた」仕事を通じ、
人間的に成長するのが善であり、
イエスや仏陀と差のない事業となる。
ということだ。

昔書いた「つまらない仕事の意義」
の記事のように、
生涯を燃やせるような仕事がない!と嘆くのは実のところ非常に正しくない。

仕事に意義というものがあるとするのならば、
それは、どれだけ世の中の為になったとかじゃなくて、
自分がどれだけ仕事を通じて成長したかということに尽きるのであります。


そして、その生き方こそ自然の法則に適っているのです。




じつはこの話。
哲学的な話だけでなくて、
実利的にも非常に理に叶ってる。

非常に面白い研究があってね。
過去から現在まで、潰れない企業を研究した結果があります。
その研究結果によれば、
永続する企業の共通点は、
顧客の満足を優先するよりも、
従業員を育てる企業である

そうです。

非常にありきたりな話のようですが、
人を育てる企業とは、如何なる企業かと言うと、
つまり、
顧客第一とかいって、
顧客ばかりを優先し、
社員を大事にしない企業ではなく、
顧客よりも、まず社員を教育して、
世の中の役に立つ人間を作る企業の方が発展する。


ということで、
これは遺伝子的にも
進化論的にも正しいらしい。

これは非常に目から鱗の結果だと思われます。

なぜなら、
資本主義とは、
従業員よりも株主の利益を優先するのが正義
だと一般的に考えてる人がきっと多いと思うのだ。
これは、要するに、
利益が正義=従業員よりも顧客優先
という結論になるわけですけど、
しかしながら、この理論は正しくない故に、必ず破綻する。
顧客の利益を最大にするには、従業員を活性化するしかない筈である。
よって従業員の利益を考えない株主は利益を得られない。

かの熊沢蕃山さえも、若き頃に、
「己とは何か?」を知りたくて、中国の哲学書である四書を読み始めたそうです。
そして、到達した結論は
「世の中に何も跡を残さず、名も残さず終わりたい。」
という無我の世界であったそうである。

この蕃山の到達した世界は世捨て人の世界ではなく、
仕事の価値を、他の人々に幸福を与えるというような、
周りの環境を変えるという大事業に価値があるのでもないのです。

蕃山が価値を感じた世界とは、
無限に自己成長することに価値を置く世界であります。
そして結果的に蕃山は、名も実績も残したわけです。


マザーテレサが慈善事業を行っているとき
あるジャーナリストが、
「こんな小さなことばかりやってもなんにもならない。
世界中には飢餓とか貧困で不幸せな人がたくさんいるのに、これは自己満足に過ぎない。」
と批判しました。

テレサはこの指摘に対しこう答えました。

「この世界は食べ物に対する飢餓よりも、
愛や感謝に対する飢餓の方が大きいのです。」

「私たちは、この世で大きいことはできません。
小さなことを大きな愛をもって行うだけです。」



人間の第一義は、「何を為すか?」ではなく、
「何であるか?」という結論は非常に奥の深い叡智であります。
そして、
あらゆる大事業は、こういう小さな志を持った人が成し遂げるのであり、
このような価値観を持つことが、最終的な勝ち組になることなのです。



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この記事へのコメント

まっつん
2011年01月10日 15:48
こんにちはエイジさん、はじめまして

2年ぐらい読むだけでしたが、初めてコメントさせていただきます

従業員を大切にするというお話は、いま勤めている会社の代表者の気持ちをそのまま表したような内容で、こんかいのお話はとても驚きました

本当に目からうろこが落ちました
こんないいお話を読ませていただいて本当にわたしは幸運です
本当にありがとうございます

絵文字の使い方がはいまいちですがよろしくご理解ください
ボス
2011年01月11日 04:07
勉強になります(^-^)納得☆
従業員は協力者であり家族でもあり大事にすべきですよね。
桜子
2011年01月11日 12:32
エイジさん、こんにちは。初めて書き込みします。
数ヶ月前にたまたま通りがかって、
時々こっそり覗いては、満足して帰っていました(笑)

初めての書き込みで、いきなりなんなのですが、
年末に、親友が自殺しました。
それも、私が彼女の言動に激怒して4年間音信不通のまま、
逝ってしまいました。

私には今、「皆の心にポッと明かりを灯せる人になれたらいいな」
と思いつつがんばっていることがあるのですが、
身近な友達一人救えずに、何が明かりやねん?と・・・。
自分が、生きている意味が全くないような気持ちになっていました。

今回の記事に、少し救われました。
ありがとうございます。
おみつ
2011年01月11日 13:58
年はじめにふさわしい話題 志ありがとうございます。
そうありたいと思うこの頃です。
煩悩を払ったのにまた湧いてきます。
みんな同じ志を持ったら こんなにモメなくてもいいのに…ってつくづく思います。
ららあ
2011年01月11日 18:10
最近読んだ本で、
ラテに感謝! ってアメリカ人の人生の転落から
スターバックスの仕事を得てから人生の価値観を180度転換した60代の男性の話なのです。

その企業の従業員はお互いの人間性に尊敬の念を抱いていて
命令ではなくお願いをする、とか、
健康保険や福利厚生に努めて、働きやすい環境を考えてくれることのありがたさを
切々と書いて有ります。

昭和の時代
日本の終身雇用の中には社員や従業員を守るシステムがありましたね。

今は企業の利益優先主義
色んな意味でそぎ落とす時代ですから、

自分を大切にしてくれる人や集合体には忠誠心は生まれますよね。
(ワンピースの海賊だってそうだわ^^;)
そこに発展の秘訣があるのかもしれませんね。

私も自分の成長を磨いてくれる仕事に
一生懸命励むことにします。
2011年01月12日 00:44
はじめましてまっつんさん。
私もこの話を知ったときは目から鱗でした。
しかし、出光とかユニクロ再生の話とか王将の事例を知ると
真実だと思います。
いろんな人に知って頂きたい話です。>まっつんさん。

この話は、いろんな人に知ってもらいたい真実の話なんですよね。>ボスさん。

桜子さん。こんばんわ。
悲しい話です。
しかしながら、
そんな経験をされた桜子さんは、
なにかのミッションかも知れませんよ。>桜子さん。

それは民主党の話ですか?
今の世の中、政治的な英雄が生きにくい時代なのは確かでしょうね。
つまりカネと権力を持たない者が政治家になれないのがいけないのです。>おみつさん。

出光は潰れる筈なのに潰れず、
ますます進化していく非常に素晴らしい企業の一つだと思うのですが、
その理由として出光の理念が考えられます。
それは、「従業員を立派な人間に育てるのが企業の本来の姿である」
という創業者の理念です。
戦国最強の武田信玄もね。
孫子のように「戦は戦略」といわず
「人は城」っていってますから
繁栄と王道の道とし、この話はまことに真実であると思います。>ららあさん。
神部
2011年01月12日 02:44
すばらしいです!eijiさん!
王道理論。気持ちが清らかになりますね。
じつに素晴らしいです。
ぴーす???
2011年01月15日 16:18
エイジさん、こんにちは。
俺もツイッター登録しました。jieandrewという名前です。エイジさんをフォローしてます。まだよくわからないけど、ツイッターでもよろしくお願いします。
2011年01月18日 23:08
王道理論を日本に広げる必要あります。
そもそも日本こそ王道の国なのですから。>神部さん。

ピースさん。こんばんわ。
フォローしましたよ。
こちらこそよろしくお願いします。>ピースさん。
mani
2019年07月06日 01:24
何かを成そうと焦った自分に染み入る内容でした。
すべては自分の中の、神に忠実に、ひたむきに。

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